おはようございます。
この記事を書いている、ジャックです。
前回に引き続き、心臓カテーテル検査についての記事です。
今回のテーマは『心臓カテーテル検査の危険性(合併症)を理解しよう』です。
医療は、絶対に安全で安心なものってイメージがありますよね。
でも、『絶対』なんてことは、この世の中にないんと思うんですよ(個人的に)。
薬を使えば副作用が出る可能性もあるし、動脈に針を刺せば大出血する可能性だってあります。
そんな危険(合併症)がなるべく起きないように細心の注意を払うこと、万が一合併症が発生した場合には被害を最小限に抑えることが医療には求められているのだと思います。
(その危険性(合併症)をしっかり説明することも大切ですね)
医療を受けられる方(今回であれば、心臓カテーテル検査を受けられる方)は、その危険性についても理解していただけると幸いです。。
心臓カテーテル検査には、どんな危険性があるの?
心臓カテーテル検査には、主に以下のような危険性(合併症)があります。
- 造影剤によるアレルギー
- 造影剤による腎臓へのダメージ
- 血栓症(けっせんしょう)、塞栓症(そくせんしょう)
- 危険な不整脈
- 出血
- 血管迷走神経反応(けっかん-めいそうしんけい-はんのう)
- その他
ひとつひとつ説明させていただきます。
1.造影剤によるアレルギー
心臓カテーテル検査では、冠動脈(心臓に栄養を送る血管)に造影剤を流す必要があります。
この造影剤には副作用があり、次のようなものが報告されています。
軽症
嘔吐(吐き気)、嘔吐(吐く)、顔色不良、造影剤注入肢の疼痛
中等症(軽症と重症の間)
重症の嘔吐、呼吸困難、筋肉の硬直
重症
肺水腫、不整脈、心停止、意識消失
心臓カテーテル検査において、造影剤による副作用は最も注意すべき合併症のひとつです。
でも、副作用の発生率は数%程度ですので、患者さんはそこまで心配する必要はないと思います。

2.造影剤による腎臓へのダメージ
造影剤には毒性があります。この毒性が、腎臓(尿をつくる臓器)に負担(ダメージ)を与えます。
特に腎臓の機能が低下している患者さんの場合は、腎臓への負担を下げるため検査前日に入院して点滴を行うことがあります。
造影剤の使用量を最小限に抑えることが、腎臓へのダメージも抑えることに繋がります。
腎臓のはたらきについては、こちらにまとめてあります。参考にしていただけると幸いです。
3.血栓症(けっせんしょう)、塞栓症(そくせんしょう)
心臓カテーテル検査は、カテーテルという細くて長い筒を血管の中で操作する必要があります。
このカテーテルを操作しているときに、大動脈(心臓の近くの太い動脈)の血のかたまり(血栓)や異常組織(プラーク)がはがれることがあります。
はがれた血のかたまり(血栓)や異常組織(プラーク)が血液の流れにのって、全身の血管のどこかに詰まることで起こる合併症です。
脳の血管に詰まることで脳梗塞、心臓の血管に詰まれば心筋梗塞など重大な合併症になります。
4.危険な不整脈
心臓カテーテル検査では、心臓の直上(大動脈の根本)までカテーテルという細長い筒を運びます。
このカテーテルやワイヤー(カテーテルを導くための糸状の金属)が心臓を刺激することで、危険な不整脈が起こる可能性があります。
カテーテルやワイヤー(カテーテルを導くための糸状の金属)を心臓を刺激しない場所まで誘導することで、危険な不整脈は治まることが多いです。
5.出血
心臓カテーテル検査を行うためには、針を動脈に刺す必要があります。
動脈はおもに手首・肘・足のつけ根のいずれかに刺すことが多いです。
(最近は親指のつけ根あたりを刺すこともあります)
針を刺すことで出血や動脈瘤という血管の“こぶ”を作ってしまったり、動静脈瘻(動脈と静脈が繋がってしまう)を作ってしまうことがあります。
6.血管迷走神経反応
血管迷走神経反応(けっかん-めいそうしんけい-はんのう)というものがあります。
極度の緊張状態、痛み、医療行為などによって、副交感神経の緊張がたかまり、心拍数の低下と血圧の低下が起きます。患者さんは意識が遠のく感じがすることがあります。
検査中にリラックスできることが1番いいのですが、、、これはなかなか難しいですよね。
不安なこと、心配なことがあれば我慢せずに、そのつど近くの看護師さんに話かけてください。
話すことで精神的に落ち着くことも検査を安全に終えるのにとても大切なことです。
7.その他
上記以外にも様々な危険(合併症)があります。
たとえば・・・
冠動脈の内側をカテーテルで傷つけてしまうことで起きる“解離(かいり)”
動脈に針を刺す際に近くの神経を傷つけてしまう“神経損傷”
などもあります。
まとめ
僕たち心臓カテーテル検査で働くスタッフは、心臓カテーテル検査が安全に問題なく終わるように努めております。
重大な合併症が起きた場合には、追加の治療や大きな手術が必要になる場合もあります。
できる限りの治療をチーム一丸となって行うことが必要不可欠です。
合併症に対する治療が必要になる割合は数%程度と少ないですが、心臓カテーテル検査には危険が伴うこともご理解していだけると幸いです。
さいごに
今回は『心臓カテーテル検査の危険性(合併症)を理解しよう』をテーマに、医療には危険(合併症)が伴うことをお話させていただきました。
今後は、医療従事者向けにカテーテル検査中に観察するところや心構えなどについても書きたいと考えております。
アンギオ室(心臓カテーテル検査を行うお部屋)のスタッフは常に造影剤のアレルギーが起きていないか、起きた場合はどのような対応を取ればいいのかを常に意識しておく必要があります。(僕も常に意識しています)