
今回は「医療従事者は賠償責任保険に入った方がいいのか」についてお話しします。
「賠償責任保険って入った方がいいのかもしれないけど、技士会に入らなきゃいけないんでしょ」とか「周りに保険に入っている人いないし、技士が訴えられるケースなんて本当にあるの?」
そんな疑問に答えるため、記事にしてみました。
是非参考にしてみてください。
こちらも併せてチェック!
Contents
賠償責任保険とは?
まず始めに、賠償責任保険について説明します。
日常生活や仕事中の偶発的な事故により、第三者に対する法律上の責任を負担した場合に、被保険者が被る損害(賠償金の支払いなど)を補填する保険のことです。
何だか難しそうに感じるかもしれませんが、最も身近な賠償責任保険に「自動車保険(任意保険)」があります。

医療従事者のための賠償責任保険
医療は日進月歩で変化しており、現場で働く医療従事者は常に新しい知識と技術を要求されます。
それと同時に、業務を行う上で発生するリスクも増えます。
医療従事者は誰しも、患者に病気を治して元気になってもらいたい。その一助を担いたい。
そう考えています。
しかし、ヒヤリ・ハットと呼ばれるような重大な事故に繋がりかねない事例は日々発生しており、ちょっとした不注意や偶発的な事故によって医療事故が起こる可能性を否定することはできません。
例え患者を傷つけたり、物を壊すつもりが無くても、医療事故は起こりえます。
万が一、医療事故の当事者となってしまった時のために、賠償責任保険はあるのです。

臨床工学技士と賠償責任保険
臨床工学技士の場合、日本臨床工学技士会が窓口になっている賠償責任保険があります。
この賠償責任保険には、大きく分けて二種類あります。
- 団体賠償責任保険
- あんしんくん
あんしんくんは、業務上の賠償責任に死亡保険や医療保険などを付け加えた保険商品です。
付け加えると保障によって、五つに分けられます。
- 障害あんしんくん
- 医療あんしんくん
- 休業あんしんくん
- 長期休業あんしんくん
- 介護あんしんくん

団体賠償責任保険について
日本臨床工学技士会の会員だけが加入できる賠償責任保険について簡単に説明します。
- 臨床工学技士の業務に特化した保険制度
- 日本臨床工学技士会が損害保険ジャパン日本興亜株式会社と契約することで、団体割引30%が適用されている
- 保険期間の中途で加入することが可能

保険金額と年間保険料について
保険期間1年間の保険金額と年間保険料は次の表の通りです。
保険金額 | 1人あたりの年間保険料 | |
賠償責任保険 | (身体事故) 1事故につき: 5,000万円 保険期間中: 1億5,000万円 |
3,380円 |
(財物事故) 1事故につき: 30万円 |
||
(人格権侵害) 1事故につき: 100万円 保険期間中: 500万円 |
||
(被害者対応費用) 1事故につき: 3万円 |
||
障害保険 | 業務中の事故による死亡・後遺障害 (後遺障害は、障害の程度に応じて 右記金額の4〜100%): 128.7万円 |

どんなときに保険金が支払われるの?
日本国内で、臨床工学技士法に定める臨床工学技士としての業務を行っているときに他人に障害を与えてしまったり、財物に損害を与えてしまった場合に、保険金が支払われます。
…このあたりは、『公益社団法人 日本臨床工学技士会 団体賠償責任保険制度(業務中の障害による死亡・後遺障害保険付)のご案内』に詳細がありますので、そちらで確認をお願いします。
損保ジャパン日本興亜保険サービス株式会社(SHS)
TEL:0120-900-262(受付時間:平日9:00~17:00)

技士会以外の賠償責任保険はあるのか?

ネット上で調べてみたのですが、日本臨床工学技士会以外の賠償責任保険を見つけることができませんでした。
看護師の場合は、公益社団法人日本看護協会が団体保険契約者となっている「看護職賠償責任保険制度」の他にも、民間企業に個人で契約する賠償責任保険があります。
たとえば、Willnextや株式会社エージェントなどが取り扱っています。
臨床工学技士のような、資格保有者が(看護師などの他職種と比べて)少なく、マイナーな仕事には、民間の保険は無いのかもしれません。

そもそも、技士が訴えられるケースなんてあるのか?
刑事裁判の判例などは、ネット上で数例確認することが出来ますが…
臨床工学技技士が、被害を受けた人に金銭的な補償をした(民事責任)という、事例をみつけることができませんでした。
これは、恐らく、臨床工学技士個人が訴えられるケースが非常に少ない。
という理由だと考えられます。
医療事故が起きたときは、病院や医師、製造メーカーなどに責任の追求がいきます。
一スタッフとして、臨床工学技士が事故の責任を問われるケースは、まだまだ少ないのかもしれません。
賠償責任保険について、僕の考え

臨床工学技士が事故の責任を問われるケースが少ない。
だから、賠償責任保険に加入する必要はない。
本当にそうでしょうか?
北海道臨床工学技士会は『臨床工学技士責任賠償保険の必要性について』の最後に、以下のように記載しています。
最後にもう一度言います。決して誇張しているわけではありません。
入る、入らないは個人の自由です。
しかし、これだけは言えます。
この責任賠償保険に入らないで臨床工学技士の仕事をするなんてあまりにも危険で無知で無責任です。臨床工学技士責任賠償保険の必要性について
(社)北海道臨床工学技士会 安全委員会 より引用
誰があなたを守ってくれるのか
医療事故を起こしたとき..
「病院があなたを守ってくれますか?」
「医師があなたを守ってくれますか?」
「所属長があなたを守ってくれますか?」
あなたが起こしてしまった事故の責任を誰かが尻拭いしてくれる。
そんな都合の良いように考えられますか?
あなたを守れるのは、あなただけです。
今まで臨床工学技士が個人として訴えられるケースが無かったからといって、この先も同じとは限りません。
病院で働く医療従事者は、賠償責任保険のことについて、しっかりと考える必要があります。

それなのに自動車保険に加入して、仕事の賠償責任保険に入らない理由ってある?
道臨工の記事を読んで、僕は加入することを決めました。
さいごに
今回は「医療従事者は賠償責任保険に入った方がいいのか」についてお話ししました。
臨床工学技士は「いのちのエンジニア」
人の命に直結する仕事をしているのです。
言い換えれば、それは簡単に命を奪ってしまうことと背中合わせということ。
自分の仕事と自分を守る手段について、医療従事者は一人一人がちゃんと考える必要がある、と言えるでしょう。
