
こういった悩みに答えます。
本記事の内容
- CPAPの治療データの見方について
- CPAP装置の設定項目とその意味について
僕は、臨床工学技士として10年以上働いています。
CPAP患者を500人以上管理する総合病院で、患者さんに対して装置の取り扱い方法や治療データの説明を行っていました。
その経験をもとに、今回はCPAP装置の設定項目や治療データの大まかな見方について説明させていただきます
Contents
治療データの見方

フィリップスのCPAP装置は、専用の解析ソフトでデータを読み込みます。
解析ソフトでは「サマリー」「トレンド」「詳細」の3つの治療データを作成することができます。
「サマリー」
サマリーとは日本語で「概要」のこと。
- コンプライアンス情報:装置の使用率や装着時間に関する情報
- 装置モード・パラメーター:治療モードや装置の各種設定に関する情報
- イベントサマリー:各圧力時におけるイベント(無呼吸や低呼吸など)の発生状況
以上のデータを数値で確認できます。
「トレンド」
トレンドとは日本語で「傾向」「動向」「流行」のこと。
コンプライアンス情報、装置モード、パラメーター情報に加えて、期間内のイベント(無呼吸や低呼吸など)のデータをグラフで表示します。
「詳細」
「詳細」データでは、「サマリー」「トレンド」と比べて、より多くのデータをグラフで表示します。
- コンプライアンス情報では、期間内の装着時間をグラフで表示
- 使用パターンでは、何時にマスクを装着して、何時に外したのかをグラフ化
- 期間内のイベント(無呼吸や低呼吸など)も「トレンド」同様グラフで表示
- 「毎日の詳細」として一日一日のデータをグラフにして表示

僕が勤めていた病院では「詳細」データを作成し、医師の診療に役立てていました。
イベント(無呼吸や低呼吸)について
イベント情報の見方について解説します。
- 気道開存無呼吸指数(平均CA指数)
- 気道閉塞無呼吸指数(平均OA指数)
- 低呼吸指数(平均H指数)
- 平均無呼吸低呼吸指数(平均AHI指数)
これらのデータの意味と目標値について、解説します。
気道開存無呼吸指数(平均CA指数)
脳からの「呼吸しなさい!」という指示が来ないため起こる無呼吸。
肺や呼吸筋に問題がない、気道も塞がっていない状態のため、気道開存無呼吸という名前が付けられています。
気道開存性無呼吸は睡眠時無呼吸の一種ですが、CPAP装置では無呼吸・低呼吸になるのを防ぐことができません(治療ができない)。
気道閉塞無呼吸指数(平均OA指数)
喉や気道に舌が落ち込む(舌根沈下)ことで起こる無呼吸。
舌が落ち込むことで気道が塞がるため、気道閉塞無呼吸という名前が付けられています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の9割が、この気道閉塞無呼吸に該当します。
CPAP装置を使用することで、気道閉塞無呼吸の発生を防ぐことができます。
低呼吸指数(平均H指数)
低呼吸とは、「気流が半分以上低下し、同時に酸素飽和度が4%以上低下するか、あるいは睡眠から覚醒すること」と定義付られています。
何だか難しい表現ですが「無呼吸ではないけど、十分な呼吸が出来ていない状態」という認識で特に問題ありません。
平均無呼吸低呼吸指数(平均AHI指数)
平均無呼吸低呼吸指数は、平均CA指数と平均OA指数と平均H指数の和になります。
平均AHI指数 = 平均CA指数 + 平均OA指数 + 平均H指数
平均AHI指数を「5未満」にすることが、CPAP装置の設定・装着の目標になります。
設定項目について

CPAP装置を取り扱っているメーカー
メーカーによってCPAP装置の機種が異なりますが、設定やデータの見方はそこまで大きく変わりません。

CPAP装置の種類
フィリップスが取り扱うCPAP装置には以下の機種があります。
- ドリームステーション
- ドリームステーションGo
- REMstar Auto SystemOne 60シリーズ
REMstar Auto System One 60シリーズは、ドリームステーションの前のモデルです。CPAP装置をレンタルで使用している場合は、順次新しいモデル(ドリームステーション)に切り替わります。
(※詳しく知りたい方は、かかりつけの病院にご確認ください。)
どの機種においても、設定項目において大きな変更点はありません。
各種設定項目
CPAP装置の設定には、以下のようなものがあります。
- 最小圧
- 最大圧
- A-Flex、C-Flex
- オートオフ
- Autoオン
1.最小圧
最小圧は、マスクをつけたときに送られてくる風の強さを表しています。
また、息を吐くときの風の力でもあります。
この設定の基準値は「4」です。
最小圧が低いと起こる可能性があること
- 息を吐いたときに、舌が落ち込み気道(空気の通り道)を塞いでしまう
最小圧が高いと起こる可能性があること
- 「風の力を強く感じる」や「息を吐きづらいと感じる」ことがある
- 風の強さが気になって、かえって寝付けなくなる
風の力を強く感じたりや息を吐きづらいと感じたり、風の強さが気になって寝付けない場合には、担当の医師にご相談ください。
2.最大圧
最大圧は、息を吸うときの風の強さを表しています。
無呼吸や低呼吸を装置が感知したときに、圧力(風の力)を上げます。
その最大の圧力が、ここで設定した値(最大圧)になります。
最大圧の設定は、CPAP装置使用下でのAHI(無呼吸低呼吸指数)が「5以下」になるように設定します。
CPAP装置は、最小圧〜最大圧の範囲で風の力を調整することで無呼吸や低呼吸になるのを防ぎます。
最大圧が低いと起こる可能性があること
- 期待した治療効果が得られず、無呼吸や低呼吸状態になってしまう
最大圧が高いと起こる可能性があること
- 息苦しさを感じることがあります
最大圧を高めに設定したいけれど、息苦しさを感じてマスクを外してしまう…
こういったケースもあるため、最大圧の設定を上げられないこともあります。
3.A-Flex、C-Flex
Flex(フレックス)は、CPAP装置から送られてくる空気の違和感を和らげる機能です。
C-Flexは患者さんが息を吐きやすくための機能。
CPAP装置は息を吐くときにも一定の風の力(圧力)がかかっているため、患者さんは「息を吐きづらい」と感じることがあります。
C-Flexを設定することで、息を吐くときだけ風の力を弱めて息を吐きやすくできます。
A-Flexは患者さんが息を吸うときと吐くときの両方の違和感を和らげる機能です。
息を吸いやすいように、ゆっくり圧力を上げることで風の強さを和らげています。
4.オートオフ
オートオフはマスクが外れたことを装置が認識したとき、自動的に空気を送るのを停止する機能です。
この機能が“オフ”のときは、マスクが外れても装置は空気を送り続けるため、治療オン/オフボタンを押して送気を停止(治療をやめる)する必要があります。
5.Autoオン
Autoオンはマスクが装着されたのを装置が認識した場合に、自動的に空気を送りはじめる(治療をはじめる)機能です。
この機能が“オフ”のときは、治療オン/オフボタンを押して送気を開始する必要があります。
鼻口マスクの場合、Autoオン機能が作動しない場合があります。
治療オン/オフボタンを押して、確実に治療を開始してください。
加温加湿器について
CPAP装置は室内の空気を取り込んで、マスクまで空気を送ってます。
CPAP装置専用の加温加湿器を使用することで、CPAP治療中・治療後の喉や鼻の乾燥・痛みを和らげることができます。
加温加湿器には、精製水を使用します。
水道水だと菌の繁殖や故障の原因になりますので、使用は控えてください。。
CPAP装置は室内の空気を取り込んでいるため、室内を適温に保ち、加湿することでも喉や鼻の乾燥を防ぐことができます。
CPAP装置専用の加温加湿器を使用する前に、ぜひお試しください
- CPAP装置専用の加温加湿器の使用には、別途レンタル料が発生することがあります。
気になる方は担当の医師や医療事務員にご確認ください。 - 加温加湿器で暖められた空気が冷めることでホースやマスク内に結露が発生することがあります。この結露水で目が覚めてしまうこともあります。
ホースを布団の中に入れて、ホース内の空気が冷めないように工夫してみてください。
まとめ

この記事の重要なところ
- 治療データは「詳細」が見やすく、分かりやすい
- 平均AHI指数は「5未満」になることを目指す
- 設定は「最小圧」「最大圧」「Flex」「オートオフ」「Autoオン」などがある
- 風の強さ(圧力)の設定は、患者さんの訴えを聞きながら慎重に決める
- 専用の加温加湿器を使用する前に、部屋の適応・加湿を試す
- 息苦しさ・喉や鼻の乾燥などがある場合は担当の医師に相談
さいごに

今回は、CPAP装置の治療データと設定項目について書かせていただきました。
CPAP治療は在宅で行われるため、医療従事者が治療の実際に見ることができません。
治療データを解析して医師の診療に役立てること、患者さんの訴えを聴いて問題を解決することが、治療を継続する上で大切になってきます。
この記事は、2020年9月にリライトしました。
あわせて、こちらも呼んでみてください。(外部リンク)
- 無呼吸ラボ/株式会社フィリップス・ジャパン
- 無呼吸なおそう.com/帝人ヘルスケア株式会社

無呼吸が良くなっているのかどうか、誰か教えて!