おはようございます。
この記事を書いている、臨床工学技士のジャックです。
クリティカルケア領域で使用される、特殊な生命維持管理装置の1つ。
大動脈内バルーンパンピング(以下、IABP)についてお話しようと思います。
日々の業務に追われて、装置の効果や表示されている数値の意味、ケアの根拠など意外と分からない人も多いのではないでしょうか?
今回は、IABPの効果と原理ついて分かりやすく書き出したので、参考にしてみてください。
(ケアについては、次回以降書きます)
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大動脈内バルーンパンピング(IABP)の効果について:まとめ
大動脈内バルーンパンピング(以下、IABP)の効果について、まとめました。
- 後負荷を減らす
- 心臓の仕事量を減らす
- 心筋の酸素消費量を減らす
- 冠動脈への血流と酸素供給を増やす
- 脳と腎臓への血流を増やす

IABPは「心臓が楽に拍動できるように補助してあげる装置」だけど、適切に使用しないと逆に心臓の動きを妨げることもあります。
正しく使用することが重要です。
IABPとは?
IABPは、大動脈内に留置したバルーン(風船)を心臓の動きにあわせて膨らませたり、萎ませたりすることで、心臓の動きを助け、血液循環を補助する装置です。
IABPを行うためには「IABPの駆動装置」と「IABPのバルーンカテーテル」が必要になります。

ヘリウムガスが使用される理由は、空気より軽く、可燃性や支燃性がないからです。
1分間に何十回もバルーンを膨らませたり、萎ませたりするので軽くて応答性の良いヘリウムガスが使用されています。
IABPの駆動装置
IABPの駆動装置(装置本体)は、「液晶モニター」、「操作パネル」、「モニタリング(心電図・動脈圧)」、「ヘリウムガスボンベ」などを搭載しています。
「モニタリング(心電図・動脈圧)」の情報を「液晶モニター」に表示し、「操作パネル」でバルーンを膨らませたり、萎ませるタイミング調整します。
バルーンを膨らませるのに「ヘリウムガス」が使われています。
IABPのバルーンカテーテル
バルーンカテーテルにはサイズがあります。
患者さんの身長にあわせて、バルーンの長さ(ガスの容量)を選びます。
バルーン容量 (ml) |
バルーンの長さ (cm) |
身長 (cm) |
35 | 203 | 155-165 |
40 | 229 | >165 |
IABPを使うとき
- 重症の心不全
- 重症の虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)

IABPの原理について
原理まで理解するのは難しいし、ちょっとマニアックかもしれません。
「よく分からない!」と思ったら、躊躇せず次の段落まで読み飛ばしてください。
- systolic unloading(シストリック・アンローディング)
- diastolic augmentation(ダイアストリック・オーグメンテーション)
systolic unloading(シストリック・アンローディング)
心臓が縮まって血液を全身に送りだすタイミングにあわせて、IABPのバルーンを萎ませます。
これによって、以下のような効果を得られます。
- 後負荷を減らす
- 心臓の仕事量を減らす
- 心筋の酸素消費量を減らす
diastolic augmentation(ダイアストリック・オーグメンテーション)
心臓が大きく広がるタイミングにあわせて、IABPのバルーンを膨らませます。
これによって、以下のような効果が得られます。
- 冠動脈への血流と酸素供給を増やす
- 脳と腎臓への血流を増やす

IABPの動作には無駄がありませんね。
再び、まとめ
- IABPは、大動脈内に留置したバルーン(風船)を心臓の動きにあわせて膨らませたり、萎ませたりすることで、心臓の動きを助け、血液循環を補助する装置。
- IABPの2つの原理は
- systolic unloading(シストリック・アンローディング)
- diastolic augmentation(ダイアストリック・オーグメンテーション)
- IABPの5つの効果は
- 後負荷を減らす
- 心臓の仕事量を減らす
- 心筋の酸素消費量を減らす
- 冠動脈への血流と酸素供給を増やす
- 脳と腎臓への血流を増やす
- IABPの適応は
- 重症の心不全
- 重症の虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞
さいごに
今回は、大動脈内バルーンパンピング(IABP)の効果と原理ついて書かせていただきました。
次回以降では「バルーンのタイミング調整」「ケアの根拠」などについても、書きたいと考えております。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
忙しい人は“効果”だけでも覚えていってね。