【ペースメーカの不具合】 メドトロニック社製のペースメーカの不具合について解説します

おはようございます。
この記事を書いている、臨床工学技士のジャックです。

 

2019年1月18日 医療機器メーカー「日本メドトロニック」は、心臓ペースメーカ(以下、ペースメーカ)に不具合が見つかったため、自主回収することを発表しました。

 

昨年11月にも医療機器メーカー「ボストン・サイエンティフィック」のペースメーカの不具合が発表されており、ペースメーカの不具合が立て続けに報告されています。
「ボストン・サイエンティフィック」のペースメーカの不具合についてもまとめました。下のリンクからご確認できます。

【ペースメーカの不具合】 ボストン・サイエンティフィック製のペースメーカの不具合について解説します

2018年12月7日

 

今回は、「日本メドトロニック」のペースメーカの不具合について記事にしました。

 

注意

ここで記載している内容は、あくまでひとつの参考にして頂けると幸いです。

この記事によって起きた事故等におきましては、一切の責任を負いかねます。

ご自身に植め込まれているペースメーカについて詳しく情報提供を受けたい場合は、必ずかかりつけの医療機関にお問い合わせください。

ペースメーカを植め込まれている患者さまへ

不具合が報告されたペースメーカを植め込まれている患者さまには、医療機関から連絡があるとは思いますが、ご自身で確認することもできますので確認方法を説明させていただきます。

 

ペースメーカを植め込まれている患者さまは、お手元にペースメーカー手帳をご用意ください。
ペースメーカ手帳の表紙または手帳の中に、ペースメーカがどこのメーカのものかが表記されていますのでご確認をお願いします。

※ペースメーカのメーカには、Boston Scientific、Medtronic、St jude medicalなどがあります

 

表紙または手帳の中に『Medtronic』(メドトロニック)とありましたら、どの機種(ペースメーカの種類)が植め込まれているか、ペースメーカ手帳で確認することができます。

 

今回不具合の報告があったペースメーカの機種

  1. メドトロニック Adapta DR
  2. メドトロニック Adapta VDD
  3. メドトロニック Versa DR

ペースメーカ手帳に上記の表記があった場合には、ペースメーカで定期通院されている医療機関に確認の連絡を入れることをお勧めします。
不具合の報告があったペースメーカが植え込まれている場合でも、必ずしも不具合が発生するわけではありません。

 

もし、『Medtronic』(メドトロニック)のペースメーカが植め込まれているけど機種名が分からない、またはペースメーカのメーカがどこか分からない場合は、ペースメーカで定期通院されている医療機関に問い合わせることもできます。

 

不具合のあったペースメーカについて

今回、不具合の報告があったペースメーカーは以下のものになります。

不具合のあったペースメーカ

一般名称:植込み型心臓ペースメーカ
販売名:

  1. メドトロニック Adapta DR
  2. メドトロニック AdaptaVDD
  3. メドトロニック Versa DR

出荷数量:

  1. 1037個
  2. 91個
  3. 30個

 

 

不具合の内容について

不具合の内容

日本メドトロニック株式会社(港区)は、同社が輸入した「メドトロニック Adapta DR」、「メドトロニック Adapta VDD」及び「メドトロニック Versa DR」の、特定の集積回路を使用した製品において、特定のモード設定のもとで心房センシングイベントを感知している最中に一定の条件を満たした場合、心房と心室のペーシングが停止する可能性があるとの報告を海外製造所から受けました。

厚生労働省ホームページ、東京都における報道発表資料より引用

 

東京都における報道発表資料を見る限り、特定のモード設定や一定の条件とあり、実際にどんなモードで、どんな条件で不具合が起きるのかが分かりません。

 

このあたりについて、説明させていただきます。

 

特定のモード設定とは

不具合が起こる可能性のあるモードをまとめました。

不具合が起こる可能性のあるモード
DDD、DDDR、DDI、DDIR、VDD、ADI、ADIR、VDI、VDIR、ODO、OAO

「モード」とは、ペースメーカの動作様式(どういったときに、どのように動くのか)を表したものになります。

 

上記のモードは、引用文にある“心房センシングイベントを感知”できる設定になります。

 

一定の条件とは

Medtronicのホームページ、プレスリリースを読んだのですが、一定の条件というものがどういったものか分かりませんでした。

 

身体への影響について

身体への影響

クラスⅠの医療機器自主回収について

東京都における報道発表資料によると、今回の医療機器自主回収はクラスⅠに分類されます。
回収クラスの分類は以下の通りです。

回収クラスの分類ついて

クラスⅠ:その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。

クラスⅡ:その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。

クラスⅢ:その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。

厚生労働省ホームページ、東京都における報道発表資料より引用

 

つまり、今回の不具合で最悪の場合、重篤な健康被害又は死亡が起こる可能性があるということです。

 

最悪の場合とは

最悪の場合、重篤な健康被害又は死亡が起こる可能性がある、と書きました。
最悪の場合とは、どのような場合なのかについて説明します。

 

当該ペースメーカが、本不具合を起こす可能性のあるモード(上記に記載)で動作中に、心房センシングイベントを感知し、その後に自己脈(心臓が自身の力で拍動すること)が起きない場合において、心臓が拍動しない状態(ペースメーカも心臓を拍動させるための電気信号を送らない=本不具合)となりめまい、失神等の重篤な健康被害が発生する可能性が考えられます。
また、最悪の場合死に至る可能性も否定できません。

補足

この内容は、僕の憶測ではなく、メドトロニックのホームページ「プレスリリースアーカイブ 埋込み型心臓ペースメーカ自主回収」内の「5. 危惧される具体的な健康被害」を参考に書いています。

 

最悪の場合が起こりにくい状況

最悪の場合を説明しましたので、逆に最悪の場合が起こりにくい状況についても説明します。

 

先程の文章では、“当該ペースメーカが、不具合が起こる可能性のあるモード(上記に記載)で動作中に、心房センシングイベントを感知し、その後に自己脈(心臓が自身の力で拍動すること)が起きない場合において・・・”と説明しました。

 

つまり自己脈(心臓が自身の力で拍動すること)が起きる場合は、最悪の場合を免れる可能性が高いといえます。

補足
仮に自己脈がある患者さまでも、医師の診察を受ける必要があります。
医師がペースメーカの動作状況と患者さまの心臓の状態を診て、不具合に対して適切な対処方法を講じるからです。

 

不具合に対する対処方法

本不具合に対する対応には、2種類あります。

  1. 不具合が起こらないモードにプログラムを変更する
  2. 植め込まれているペースメーカを交換する

 

ペースメーカは、植め込まれている患者様一人ひとり違う動作をしています。
それは、不具合が起こらないモード(ペースメーカの動作様式)に変更しても問題ない患者さまもいれば、問題のある患者さまもいるということです。

 

不具合が起こらないモード(動作様式)にプログラムを変更できない(変更することで、ペースメーカ本来の役割を果たせない)場合には、植め込まれているペースメーカを交換することも検討しなければいけません。

 

不具合に対してどのように対処するのかは、主治医の判断となります。
(当然、医療機器メーカーのメドトロニック担当者と医療機器に詳しい臨床工学技士は、必要十分な情報を医師に提供・説明する必要があります)

 

まとめ

今回のメドトロニック社製のペースメーカの不具合をまとめると

  •  メドトロニック Adapta DR、メドトロニック AdaptaVDD、メドトロニック Versa DRにおいて不具合が報告される
  • 不具合が起こる可能性のあるモードはDDD、DDDR、DDI、DDIR、VDD、ADI、ADIR、VDI、VDIR、ODO、OAOである
  • 患者さま自身で植め込まれているペースメーカが当該機種であるかどうかを確認することができる。定期通院されている医療機関に連絡し確認を取ることができる
  • 医療機器自主回収クラスはクラスⅠで、最も危険度の高いものである
  • 不具合に対する現状の対処方法は2種類。不具合が起こらないモードにプログラムを変更するか、植め込まれているペースメーカを交換するかである。(医師の判断により決定される)

 

さいごに

本不具合は海外において4件の報告があり、死亡事例と重篤な健康被害の報告はありません。
また、現在まで国内においても健康被害が発生したという報告はありません。

 

僕の個人的意見ですが、今回の不具合はあってはいけないレベルのものだと思います。
しかしながら、現場で働く一医療従事者として今の僕が出来ることは、自分が所属している医療機関において、当該ペースメーカを植え込まれて患者さまを調査・把握すること、病院経営者や医師・部署長に情報を提供すること、関連部門と情報を共有すること、広報担当者へ情報を提供しホームページに病院の対応を掲載するように働きかけること、患者さまへ電話で説明すること、医療機器メーカーと連携をとること、だと思います。

 

臨床工学技士として自分にできること、自分がやるべきことを考え、手を抜かずに真摯に取り組むことなのではないかと思います。



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ジャック

とある病院ではたらく、とある臨床工学技士。 「臨床工学技士の認知度向上」と 「むずかしい医療機器を、分かり易く&簡単に」を このブログを通して1人でも多くの人に伝えていきたいと思います。