おはようございます。
この記事を書いている、ジャックです。
2018年11月28日 心臓ペースメーカ(以下、ペースメーカ)に不具合が見つかったニュースが各種報道機関より公表されました。
ペースメーカと深く関わるスタッフとして、今回の報道について解説させていただきたいと思います。
問題の起きたペースメーカについて
問題が報告されたペースメーカは、「ボストン・サイエンティフィック」社製のペースメーカです。
該当する医療機器
【植込み型心臓ペースメーカ】
- 製品名:ACCOLADE Pacemakers
販売名:アコレード - 製品名:ACCOLADE MRI Pacemakers
販売名:アコレード MRI
【除細動機能なし植込み型両心室ペーシングパルスジェネレータ】
- 製品名:VALITYUDE CRT-P
販売名:ヴァリチュード
「ボストン・サイエンティフィック」社製のペースメーカで、上記以外の機種に不具合の報告はありません。

不具合の内容について
今回の不具合の原因は「MVセンサー」というセンサーに問題がありました。
「MVセンサー」は1分間の呼吸量(分時換気量)の変化を測定し、それに応じて心拍数を上げる機能があります。
人は歩いたり、走ったり、畑作業をするなどの活動量に応じて呼吸量が変化します。
呼吸量の変化を活動量の変化と捉えて、それに応じた心拍数を可能にするのが「MVセンサー」というわけです。
このセンサーの不具合で、患者さんには「めまい」「気が遠くなる」「失神」などの症状が起こる可能性があります。
これらの症状を感じた場合は、早めにかかりつけの医療機関への受診をお願いします。
患者さんはどうしたらいいの?
今回の不具合は、緊急的な対応が必要な事象ではありません。
焦らず医療機関からの連絡を待ちましょう。
もし医療機関からの連絡がない場合は、かかりつけの医療機関に連絡を取りましょう。
医療機関(専門の医師)の指示に従って、行動をとってください。
ペースメーカを身体から取り出すことなく、不具合を解決することが出来ます。
ペースメーカを点検するための専用装置を用いて、ペースメーカをアップデートします。
(アップデートすることで不具合の解決ができます)
所要時間は3〜5分程度です。

なぜ、緊急的な対応が必要ない?
なぜ緊急的な対応が必要ない、と判断できるかといいますと・・・
不具合事象の発生が非常に限定的だからです。
※ここの説明は難しいので、読み飛ばして頂いて構いません。
ペースメーカは、ペースメーカ本体とリードと呼ばれる導線の2つのパーツから成ります。
このリード(導線)は「心臓の電気信号」をペースメーカ本体に伝えたり、「ペースメーカからの電気信号」を心臓の筋肉に伝える電気の通り道の役割があります。
今回報告のあった不具合は、このリード(導線)が何らかの理由で、電気が通り難い状態になった場合に発生します。
電気が通り難い状態とは、たとえば「心臓に留置されているリード(導線)の場所がズレてしまう」「リード(導線)が折れたり、切れて断線してしまう」ような状態があります。
「植え込んだリードがズレたり」、「リードが断線したり」して電気が通りにくい状態になってしまうと、「MVセンサー」が発信する非常な微力な電気信号を心臓の電気信号だとペースメーカが誤認識するようになります。
心臓は電気信号を出していない(心臓が動かない)のに、まったく異なる電気信号(MVセンサーが出した電気信号)を心臓の動き(心臓の電気信号)だと勘違いすることで、心臓が動かない状態になります。
これが、先に述べた「めまい」「気が遠くなる」「失神」などの症状の原因です。
「リードがズレる」「リードが断線する」ようなトラブルは、非常に発生率が低いので「緊急的な対応が必要ない」と判断できます。

まとめ
今回公表されたペースメーカの不具合は・・・
ボストンサイエンティフィック製のペースメーカ
- 製品名:ACCOLADE Pacemakers
販売名:アコレード - 製品名:ACCOLADE MRI Pacemakers
販売名:アコレード MRI
ボストンサイエンティフィック製の両心室ペーシングパルスジェネレータ
- 製品名:VALITYUDE CRT-P
販売名:ヴァリチュード
を植え込まれている患者さまが対象です。
不具合が起きると、「めまい」「気が遠くる」「失神」などの症状が起こる可能性があります。
緊急的な対応は必要ありません。医療機関(専門の医師)の指示に従って行動することが大切といえます。
さいごに
今回は時事ネタである「ペースメーカの不具合」について記事にしました。
医療機器は「機械」である以上、こういったリコールが発生することは避けられないのかもしれません。
リコールの発生は仕方ない、では済みません。
適切な情報を、適切な時期に収集し、正確な情報を患者さんへ提供すること、不具合の発生を最小限に抑えることを医療機関・医療機器メーカーは徹底する必要があります。
臨床工学技士にとって、今回の不具合のニュースは色々考えさせられるところがありました。
こういった時事ネタは今後も記事にしていきたいと思います。