
今回から[ペースメーカの基礎]についての記事を投稿します。
1回目(今回):ペースメーカの役割と適応疾患
2回目:心臓の役割と刺激伝導系
3回目:ペースメーカ患者さんが気を付けるポイント
4回目:ペースメーカ手帳に書いてあること
番外編:臨床工学技士とペースメーカのお仕事
の5本を予定してます。
これから心臓ペースメーカに関わる看護師さんや臨床工学技士さんに向けた内容です。
「俺、デバイスのことなら何でも知ってるぜ!」という方はYoutubeでP丸様の【MV】シル・ヴ・プレジデントでもご覧ください。可愛いです。
それでは早速はじめましょう。
ペースメーカの役割

ペースメーカの役割を一言であらわすと
ある一定の心拍数を下回らないように電気刺激を心臓に送り、心臓が拍動することを助ける
と言えます。
心拍数が少ないだけで病気といえない理由
正常な心臓は1分間に60〜80回程度の速さでかつ一定のリズムで動きます
個人差が大きく、年齢や体温、スポーツ経験の有無によっても変わります。
スピードスケート500m 平昌オリンピック金メダリスト小平奈緒選手は、安静時脈拍数が35〜36回と一般人の脈拍数と比べると遥かに少ないそうです。
このように心拍数は個人差が大きく、心拍数が少ないからといって必ずしも病気とは言えません。
少ない脈拍数でも小平選手はオリンピックで金メダルを獲得するほどの身体の持ち主。
脈拍数が少ないことで何かしらの不調があるとは考えにくいですよね。
(これはスポーツに適応するため心臓の筋肉が発達し、結果として心拍数が低下するスポーツ心臓と考えられます)
余談になりますが、小平奈緒選手は長野県にある相澤病院に所属しています。
病院に所属しているオリンピック選手って珍しいですよね
この辺りのことが気になった方は是非こちらの記事もご覧ください。
→長野県内で活動を希望する小平選手にチャンスを提供した相澤病院の考えとは(リクルートドクターズキャリア)

ペースメーカの適応となる疾患

ペースメーカの役割は
「ある一定の心拍数を下回らないように電気刺激を心臓に送り、心臓が拍動することを助ける」
ことでしたね。
これを逆に考えると….
心拍数が下がることで身体にさまざまな不調をきたす病気がペースメーカの適応と考えることができます。
ペースメーカは脈拍数が少なくなる病気(徐脈性不整脈)で、めまいや失神、息切れ、心不全等の症状を呈する場合に適応となる。
徐脈:1分間の心拍数が60回以下の状態
代表的な2つ徐脈性不整脈
代表的な脈が遅くなる病気(徐脈性不整脈)には
①洞不全症候群
②房室ブロック
の2つがあります。
1つずつ解説します。
洞不全症候群(SSS)
心臓は電気刺激によって拍動しています。
この電気刺激は洞房結節(どうぼうけっせつ)から規則的に出ています。
この洞房結節に何らかのトラブルが起きて、電気刺激を送らない又はその頻度が極端に少なくなることで徐脈になる。
脈が遅くなることで、失神したり、めまい、疲労感などの症状を呈する。
これが洞不全症候群(SSS:sick sinus syndrome)です。
【洞不全症候群の定義】
洞性徐脈、洞停止、洞房ブロック等による徐脈が原因となり、眼前暗黒感、めまい、疲労感などの脳虚血症状もしくは心不全症状を呈する状態
房室ブロック
心臓には「心房」と「心室」という部屋があります。
「心房」は血液が帰ってくる部屋(全身を巡った血液や肺からの血液が心臓に戻るところ)
「心室」は血液を送り出す部屋(全身や肺に血液を送る出すところ)
洞房結節から出た電気刺激が「心房」から「心室」へ順序よく流れることで、全身に血液を送り出すことができます。
房室ブロックでは、この「心房」から「心室」の電気の流れが部分的または完全に途絶える状態のことをいいます。
【房室ブロックの種類】
・1度房室ブロック
・2度房室ブロック
①Wenckbach型ブロック(Mobitz I型)
②Mobitz II型
・3度(完全)房室ブロック
1度→2度→3度の順で重症度が増す。
心臓を動かす「電気が出る場所」や「電気の流れ」の問題
ペースメーカの適応となる病気は、心臓を動かす「電気がでる場所」や「電気の流れ」に問題があることを理解していただけたと思います。
「電気の流れ道」を刺激伝導系(しげきでんどうけい)といいます。
刺激伝導系について次回の記事で解説します。
さいごに

今回はペースメーカの役割や適応疾患について書いてみました。
ペースメーカは「心拍数が下がることで身体にさまざまな不調をきたす病気」に対して植え込む。
これだけでも覚えていただけると嬉しいです。
ペースメーカは本当に奥が深い分野。
だからこそ基礎から少しづつ、ゆっくり、でも着実に覚えていくことが大切です。
次回は『ペースメーカの基礎②』心臓の役割と刺激伝導系についての記事を投稿する予定です。
