おはようございます。
この記事を書いている、ジャックです。
今回は『ポリグラフの情報にフォーカスを当ててますか?』をテーマに、ポリグラフという装置の概要、ベッドサイドモニタとの違い、臨床工学技士が行っていることなどをまとめてみました。
- ポリグラフって病棟で使用するモニタ(生体情報モニタ)とは違うの?
- 測定データがたくさんあるけど、どこを観察したらいいの?
そのような疑問をお持ちのスタッフは、是非読んでいただきたいと思います。
Contents
ポリグラフとは?
「ポリグラフ」という言葉を聞いたことがあります?
耳にしたことあるけど意味まではわからない、そんな方もいらっしゃると思います。
Wikipediaによると
ポリグラフ(英: polygraph)は、呼吸・脈拍・血圧など複数の生理現象を、電気的または物理的なシグナルとして同時に計測・記録する装置である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
とあります。
病院では主に、
- 心臓カテーテル検査・治療で使用するポリグラフ
- 睡眠時無呼吸症候群を検査するための終夜睡眠ポリグラフ
などがあります。
生体情報モニタとの違いについて
ポリグラフと同じように生体情報を記録する装置があります。
ベッドサイドモニタ(生体情報モニタ)です。
病棟で患者さんの生体情報を測定・記録しているモニターのことです。
なぜ、アンギオ室(心臓カテーテル検査をするお部屋)ではベッドサイドモニタではなくポリグラフで生体情報を観察するのでしょうか?
まず、そこからお話します。
ベッドサイドモニタとポリグラフの違い
ベッドサイドモニタ | ポリグラフ | |
心電図の計測 | ○ | ○ |
呼吸の計測 | ○ | ○ |
非観血式血圧の計測 | ○ | ○ |
観血式血圧の計測 | ○または△ (オプション) |
○ |
動脈血中酸素飽和度の計測 | ○ | ○ |
冠血流予備量比(FFR)の計測 | × | ○ |
心拍出量 | △ (オプション) |
○ |
心内心電図の計測 | × | ○ |
弁口面積の計測 | × | ○ |
圧波形の解析 | × | ○ |
心臓シャント率・シャント量 | × | ○ |
持ち運び | ○ | × |
アンギオ室(心臓カテーテル検査をするお部屋)のポリグラフはベッドサイドモニタと比べて、より詳しく生体の情報を計測することができます。
また、ポリグラフは周辺機器との連携も良好で、動画サーバーを通して記録したデータを電子カルテに反映させることができます。
(血管内超音波装置(IVUS)に心電図信号を送ることもできます)
心臓カテーテル検査・治療で使用するポリグラフの特徴
心臓カテーテル検査・治療で使用するポリグラフは
- 心電図(12誘導)
- 呼吸回数
- 非観血式血圧
- 観血式血圧
- 動脈血中酸素飽和度
- 心拍出量
などの様々な生体情報を計測することができる装置です。
心カテスタッフがポリグラフで観察すべきポイント
1.心電図(12誘導)
- 心電図の波形が正しく表示されていることを確認する
- 心電図のHRが正しく表示されていることを確認する
- 心拍数がダブルカウントされていないかを確認する
- コントロールの心電図を記録していることを確認する
- コントロールの心電図からの心電図変化(特にST変化)を観察する
- 徐脈、致死性不整脈はすぐに医師へ報告する
2.観血式血圧(IBP)
- ゼロバランスが正しくとられているかを確認する
- 観血式血圧が正しく表示されていることを確認する
- レンジ設定(mmHg)が適切であることを確認する
- 観血式血圧の変動を観察する
- 観血式血圧が表示されていない場合、その原因を追求する
- 観血式血圧が鈍(なま)っている場合、その原因を追求する
- 観血式血圧が低い場合は、医師へ報告する
3.動脈血酸素飽和度(SpO2)
- 患者の爪の状態、マニキュアがついていないことを確認する
- SpO2の数値・波形が正しく表示されていることを確認する
- SpO2が低値の場合、その原因を追求する
- SpO2が低値の場合、医師へ報告する
4.非観血式血圧(NIBP)
- カフ装着肢に透析用シャントがないことを確認する
- 基本は観血式血圧を観察する
- 観血式血圧が表示されていなときは、非観血式血圧を観察する
- 観血式血圧と非観血式血圧の差を観察する(動脈圧が鈍ると差がひらくetc)
- 自動測定を設定する場合、測定間隔を把握する
臨床工学技士はポリグラフで何をしているの?
公益社団法人 日本臨床工学技士会のサイトに心血管カテーテル業務指針というものが掲載されています。
業務指針には
6)業務と記録の具体例
⑴ 虚血性心疾患,弁膜症,先天性心疾患などに関する業務①生体計測関連業務
心臓カテーテルモニタリングシステム(ポリグラフ,ラボ装置等)を用い生体情報の監視,
報告ならびに計測,記録を行い,測定値より算出される各種情報を理解する.
とあります。
手術中の生体情報の記録は看護師の仕事と思われている方もいるかもしれませんが、臨床工学技士の仕事でもあるわけです。
患者のバイタルに変化・異常があった場合には速やかに医師に報告・記録することが必要です。
具体的にはこんなことをしています
- ポリグラフの始業終業点検
- ポリグラフへの患者情報の入力
- 患者入室時、退室時、ST変化、不整脈、など心電図の記録
- スワンガンツカテーテル時の心臓内圧、心拍出量の記録、解析
- 左室造影時の心臓内圧の記録、解析
主に以上のことを行っています。
弁口面積測定、心臓シャント率の計測は当院ではあまり実施していません。
こんなところにも注意しよう
ポリグラフを取り扱う上で、こんなことにも注意すると良いと思うことを書きます。
1.ポリグラフの表示画面に、どの測定項目を表示させ、何を表示させないのかを統一する
施設によってはポリグラフを、心臓カテーテル検査・治療以外の症例にも使用されることもあるのではないでしょうか?
たとえば、肝臓がんに対する動脈塞栓術(TAE)、脳血管造影、四肢の血管造影・拡張術などがあるかと思います。
心臓カテーテル検査・治療時には表示させていなかった計測項目が、他の検査・治療では表示させる必要があった、なんてことにならないよう測定項目を院内で統一する方が望ましいです。
2.記録する内容を統一する
検査の場合は、心電図を動画サーバーに飛ばさない(電子カルテに載せない)
治療の場合は、心電図を動画サーバーに飛ばす(電子カルテに載せる)
など、○○○の場合は、△△△をするという個別ルールを複数作ると間違いが起こりやすいです。
どのタイミングで、何の記録を電子カルテに残すのかを部門内でルール化し、周知徹底することが望ましいです。
まとめ
- ポリグラフは呼吸・脈拍・血圧など複数の生理現象を、電気的または物理的なシグナルとして同時に計測・記録する装置
- ポリグラフはベッドサイドモニタと比べて、より詳しい生体情報を計測することができる
- 心臓カテーテル検査・治療中はポリグラフの測定項目を観察し、異常があった場合は速やかにその原因を追求・解明し、医師へ報告する
- 日本臨床工学技士会が心臓カテーテル業務の業務指針を掲載している
- ポリグラフに表示させる項目は統一する、また電子カルテに反映させるデータも統一する
さいごに
今回は『ポリグラフの情報にフォーカスを当ててますか?』をテーマに、ポリグラフという装置の概要、ベッドサイドモニタとの違い、臨床工学技士が行っていること、などついて書かせていただきました。
今後の心カテ関係の記事では、各種装置に始業終業点検、医療材料の種類と構造、補助循環装置などについても記事にしていきたいと考えております。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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