
こういった悩みに答えます。
本記事の内容
- ペースメーカの種類と呼び方
- 体外式ペースメーカの特徴と弱点
- 体外式ペースメーカの機能
僕は、臨床工学技士として10年以上働いています。
体外式ペースメーカの植え込み術に携わったり、病棟でのトラブル対応などを行っていました。
だから、看護師さんが体外式ペースメーカに対して不安な気持ちを抱いているのはよく分かります。
この記事では、体外式ペースメーカの基礎について説明します。
こちらも併せてチェック!
テンポラリー、体外式。呼び方が違うけど何が違うの?

ペースメーカは種類によって、呼び方が変わってきます。
ここを曖昧にしたままだと、この先の理解が難しくなってしまいます。
ここでしっかりと理解しましょう。
種類 | 呼び方 | 補足説明 |
体外式ペースメーカ | 体外式ペースメーカ テンポラリーペースメーカ |
テンポラリー(temporary) とは“一時的”とか“仮の”という意味 |
植込み型ペースメーカ | 植込み型ペースメーカ パーマネントペースメーカ |
パーマネント(permanent) とは“永久の”とか“永続する”という意味 |
※表が見切れている場合、スクロールで全文を確認することができます。

経皮的ペーシングと言われる緊急時に使用するペーシングもあるのですが、ややこしくなるので、ここでは説明を割愛させていただきます。
経皮的ペーシングも体外式ペースメーカの一種です。
体外式ペースメーカの特徴と弱点

体外式ペースメーカの特徴と弱点
- 緊急症例に適している
- 準備物品が少ない
- 感染のリスクがある
- 電池の寿命が短い
順番に深堀りします。
特徴1:緊急症例に適している

体外式ペースメーカは「一時しのぎ」。
最初から植込み型のペースメーカを入れればいいじゃないか、そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、体外式ペースメーカには、植込み型ペースメーカにはないメリットがあり、無くてはならない医療機器なのです。
- 体外式ペースメーカは、植込み型ペースメーカと比べて手技が簡便なため、早期に徐脈を改善したい場合に適している。
⇒ペースメーカ本体が体の外にあるため、植込み型ペースメーカのように皮下にペースメーカを収納するためのポケットを作る必要がない
たとえば
右冠動脈が血栓などで閉塞すると、脈が遅くなることがあります。
カテーテル治療で一刻も早く治療したい、徐脈も早期に改善したい。
そんなときに必要になるのが、体外式ペースメーカなのです。
一大事のときの体外式ペースメーカ。
時間的に余裕があるときの植込み型ペースメーカ。
そんな風に覚えておいてください。
特徴2:準備物品が少ない
体外式ペースメーカを動かすのに必要なもの
- ペーシングリード
- シース
- 体外式ペースメーカの本体
- 体外式ペースメーカの電池
これだけ用意すれば、物の準備は大丈夫。
あとは医師の手技で体外ペーシングを始めることができます。
これに対して、植込み型ペースメーカは
- 患者さんの原因疾患や体格などを鑑みて、ペースメーカの機種(種類)・リードの長さ、ペースメーカ本体を留置する場所、輸液ルートの確保…など事前に用意すること、確認することが沢山あります。
⇒植込み型ペースメーカは、何十年と使い続けます。
だからこそ、患者さんに合ったものを慎重に選ぶ必要があります。
弱点1:感染のリスクがある
体外式ペースメーカは、首の血管(内頸静脈)や足の付け根の血管(大腿静脈)からペーシングカテーテルを挿入します。
先に述べたように、体外式ペースメーカは「緊急的」に入れます。
剃毛(毛を剃る)する時間的余裕もないため、消毒効果が十分に得られないことも考えられます。(大腿静脈の場合)
また、体外式ペースメーカのペーシングカテーテルは血管内(体の中)と外界(体の外)を交通するため、血管内に微生物が侵入する恐れがあります。
弱点2:電池寿命が短い
体外式ペースメーカは、アルカリ乾電池(9V・角型)で動作している機種が多いです。
動作状況によっても異なりますが、電池寿命は1週間程度です。
もちろん、1週間より短い場合もあります。
体外式ペースメーカの本体に電池寿命を知らせるランプがあります。
機種にもよりますが、電池残量が少なくなると赤いランプが点灯します。使用中は必ず確認してください。
不安な場合は、院内の臨床工学技士に確認をお願いしましょう。
これに対して、植込み型ペースメーカはリチウム電池を使用しています。
電池は小さいのに10年近くペースメーカを動かすことができます。

体外式ペースメーカの動作

体外式ペースメーカの2つの動作様式
- [VVI]モード
- [VOO]モード
ペースメーカの動作様式は、アルファベット3文字(4文字や5文字のときもあります)で分かります。
体外式ペースメーカは[VVI]か[VOO]のどちらかになります。
順番に深堀りしていきます。
[VVI]モードについて
VVI(ブイ・ブイ・アイ)モードは
- 心室を刺激するための電気を流す
- 心室が動いているか、動いていないかを監視する
- 心室が動いていたら、心臓を動かすための電気を流さない
- 患者さんの心室が動いているときは、電気刺激を流さない。
- 患者さんの心室が動いていないときは、脈が伸びないように電気を流して、心臓を動かす。
という動作です。
これを専門用語でいうと…
- 心臓を刺激するための電気を流す=ペーシング
- 心臓が動いているのを感知する=センシング
- 心臓が動いていたら、心臓を動かすための電気を流さない=インヒビット
といいます。
心室をしっかりと動かすことで全身に血液を送り出す。
これが、[VVI]モードの動作です。
体外式ペースメーカは、基本的に[VVI]モードに設定します。

[VOO]モードについて
VOO(ブイ・オー・オー)モードは
- 心室を刺激するための電気を流す
- 心室の動きを監視しない。(無視する)
- 心室が動いても、動いていなくても関係ない
- 患者さんの心室が動いていようがいまいが、お構いなく心臓を動かす電気を流す。
という、動作です。
このモードの怖いところは、患者さんの心臓の動きを無視して電気をながすためT波のタイミングでペーシングを入れてしまう恐れがあること。
医原性に心室細動を誘発してしまう危険性があるため、特殊なケースを除いて設定することはありません。
まとめ

この記事の重要なところ
ペースメーカの種類と呼び方
- 体外式ペースメーカ
⇒(呼び方)テンポラリーペースメーカ・体外式ペースメーカ - 植込み型ペースメーカ
⇒(呼び方)パーマネントペースメーカ・植込み型ペースメーカ
体外式ペースメーカの特徴と弱点
- 緊急症例に適している
- 準備物品が少ない
- 感染のリスクがある
- 電池の寿命が短い
体外式ペースメーカの2つの動作様式
- [VVI]モード
- [VOO]モード
基本的には[VVI]モードに設定。
さいごに

今回は、体外式ペースメーカの特徴と機能についてお話しさせていただきました。
基本的な内容ですが、どれも大切なことばかりです。
今回の内容を理解することで、各設定値(レート・出力・感度)の意味、トラブルの見つけ方と対処法などが理解しやすくなります。
この記事は、2020年9月12日にリライトしました。

正直、あまり見たことが無いから不安だよ。