おはようございます。
この記事を書いている、臨床工学技士のジャックです。
【はたらく医療機器】のテーマでは、病院で使用されている医療機器について書いています。
一般の方には、医療機器とはどんなものなのかを
医療従事者の方には、知っているようで知らない耳寄り情報を届けたいと思います。
2回目は、『シリンジポンプ』についてです。
※シリンジとは、このイラストの注射の薬剤が入っている筒の部分のことをいいます

Contents
シリンジポンプって、どんな医療機器?


薬物を投与するなら、なんでわざわざ輸液ポンプとシリンジポンプの2つの機械に分ける必要があるのかしら?

それは、それぞれのポンプには得意・不得意があるからだよ。
シリンジポンプはどんなときに使うのかをお話ししましょう
シリンジポンプはどんなときに使うのかをお話ししましょう
輸液ポンプについても記事にしました。併せて読んでみてください。
シリンジポンプはどんなときに使うの?

シリンジポンプは輸液ポンプよりも“少ない量の薬液”を“より正確に”投与することができるように出来ているんだ。
その精度は±3%程度の装置が多いみたいだね(輸液ポンプの精度は±10%程度)
その精度は±3%程度の装置が多いみたいだね(輸液ポンプの精度は±10%程度)

少ない量で身体に大きな作用がある薬剤を投与するときに、積極的にシリンジポンプを使った方が良いってことね

ドパミンやノルアドレナリンのような心臓の血管に作用する薬はもちろん、未熟児や新生児のような身体の小さなこどもにもシリンジポンプは使われているよ
1Point
- 少ない量の薬剤を、一定の速度で正確に投与したいときにシリンジポンプを使用する
- 多くの量の薬剤を、長い時間をかけて投与するときには輸液ポンプを使用する
サイフォニング現象に気をつけて

シリンジポンプを使用するときには、サイフォニング現象に気をつけましょう

サイフォニング現象ってなに?

サイフォニング現象は、「シリンジが押子に正しくセットされていない状態」で「患者さんより高い位置にシリンジポンプがある」ことで発生します
サイフォニング現象が起きると、シリンジポンプ(薬剤のあるところ)と患者さんとの高低差(落差)により、短時間で薬剤が投与されてしまい、患者さんを危険にさらしてまうんだ
1Point
- サイフォニング現象は、シリンジが押子から外れていたり、フランジ(シリンジの羽のところ)がスリット(溝)にセットされていない状態で且つ、シリンジポンプが患者さんより高い位置にあると発生する
- サイフォニング現象は、患者さんとシリンジポンプの高さを同じにすることで防ぐことができる
シリンジポンプの注意点

シリンジポンプを使う上で、サイフォニング現象の他にも注意することってあるの?

シリンジポンプの“早送りボタン”を使ったプライミングを行うようにしましょう
これは意外と知らないスタッフもいるかもしれないけれど、大事なことなので覚えておいて欲しいことなんだ
これは意外と知らないスタッフもいるかもしれないけれど、大事なことなので覚えておいて欲しいことなんだ

シリンジと回路内の空気抜きは用手でやるだけだと、どうしてダメなの?

もちろん、用手的にプライミングしても問題ないよ
ただ、シリンジをシリンジポンプに取り付けたあとに、“早送りボタン”を押してシリンジとシリンジポンプの隙間を埋める(密着させる)作業が必要なんだ
ただ、シリンジをシリンジポンプに取り付けたあとに、“早送りボタン”を押してシリンジとシリンジポンプの隙間を埋める(密着させる)作業が必要なんだ

この作業を行わないとシリンジとシリンジポンプの隙間が原因で、薬剤がしっかりと投与されない、という問題が起こってしまうんだ
1Point
- シリンジをシリンジポンプに装着後に、“早送りボタン”を使ったプライミングを行う必要がある
- この作業によりシリンジとシリンジポンプ間の隙間が埋まり、予定の薬剤量を投与することができる
こんなときは、臨床工学技士にご連絡ください

このシリンジポンプ、すぐにバッテリ警報が鳴っちゃうんだけど、どうしたらいいのかしら…

シリンジポンプなどの医療機器には、定期的に交換が必要な部品があるんだ
頻回にバッテリ警報(電圧低下警報)が鳴る場合は、バッテリの劣化が考えられるので臨床工学技士に連絡してください
頻回にバッテリ警報(電圧低下警報)が鳴る場合は、バッテリの劣化が考えられるので臨床工学技士に連絡してください

他にも、下の表に書いたようなことがあったら、臨床工学技士にご連絡ください
こんなときはMEに連絡!
- バッテリ警報(電圧低下警報)が頻回に鳴るような場合
- 電源コードの3Pコンセントが折れた、曲がった場合
- 電源コードかシリンジポンプからすぐに外れてしまう、緩い場合
- 閉塞警報が頻回に鳴るような場合
- シリンジポンプを落とした、強い衝撃を加えた場合
- シリンジポンプの外装が破損した場合
- シリンジポンプの液晶にエラー番号が表示された場合
上記のような場合は、迷わず臨床工学技士にご連絡ください
さいごに

【はたらく医療機器】シリンジポンプは、いかがだったでしょうか?
今後も【はたらく医療機器】をテーマに色んな医療機器について紹介していきたいと思います
比較的メジャーな医療機器のひとつです